私がこのブログで書評を始めるときに、
勝手に決めたルールがあります。
それは、
発売から半年以上経過した本は紹介しない。
ということ。
なぜかと言いますと、
本は年間で8万冊以上出版されるそうですので、
半年以上経過した本は、書店に置いていない可能性が高いから。。。
もちろんアマゾンをはじめとするネット書店では
ほぼ確実に在庫がありますが、
しかし、私自身、本を購入するときは、
書店で現物をパラパラ眺めてから購入を決めるタイプでして。。。
ですから、
できるだけ確実に書店で、
実際に手に取った上で購入できるように、
発刊から半年以内の書籍を紹介しようと
決めていたわけです。
が、今回、そのルール破ります。
今回、ご紹介する書籍が発売されたのは2008年の3月。
今は2009年の10月。。。
半年どころか、一年半以上前に出版された本です。
しかし、侮るなかれ、
未だに書店によっては平積みされています。
すなわち、それだけ多くの人の共感を得たわけです。
そして、
私自身もルールを破って紹介する気になってしまったわけです。

■ 書籍概要
『日本でいちばん大切にしたい会社』
坂本 光/著
あさ出版(2008/03)
ISBN 4860632486
■ 目次
第1部 会社は誰のために?
(「わかっていない」経営者が増えている!
会社経営とは「五人に対する使命と責任」を果たすための活動
業績ではなく継続する会社をめざして
業績や成長は継続するための手段にすぎない
社員は利益だけを求めているわけではない
「多くの人を満足させる」こと。それが会社の使命
経営がうまくいかない理由は内側にある
中小企業にしかできないことがある
日本で大切にしたい会社を増やそう
続けていくことの大切さ)
第2部 日本でいちばん大切にしたい会社たち
(障害者の方々がほめられ、役立ち、必要とされる場をつくりたい-日本理化学工業株式会社
「社員の幸せのための経営」「戦わない経営」を貫き、四八年間増収増益-伊那食品工業株式会社
「人を支える」会社には、日本中から社員が集まり、世界中からお客様が訪ねてくる-中村ブレイス株式会社
地域に生き、人と人、心と心を結ぶ経営を貫いていく-株式会社柳月
「あなたのお客でほんとうによかった」と言われる、光り輝く果物店-杉山フルーツ)
著者のモットーは
● 現場で中小企業研究や、がんばる中小企業を支援する
だそうです。
これまで訪問した企業数は、優に6000社を超えているそうで、
著者の情熱が伝わってきます。
そんな著者が訪問している企業というのは、
どんな企業でもいいというわけではありません。
● 私が意識して訪問させていただいている企業は、
長期にわたり好業績を持続している企業や、業績はともかく、
真に世のため人のためにになる経営に取り組んでいる価値のある企業です。
著者の掲げるその条件は、
企業として理想的な経営をしていると言ってもさしつかえないでしょう。
目次からも分かるとおり、本書は2部構成になっています。
第1部では、「会社は誰のために」。
経営者が心すべき「5人」に対する使命と責任について書かれています。
ちなみに「5人」については、本書をご確認いただければと思います。
また、第2部は「日本でいちばん大切にしたい会社たち」。
実際に実在する企業5社を取り上げ、
その会社の大切にしたい理由とその経営について書かれています。
紹介されている企業は
「日本理化学工業」、「伊那食品工業」、「中村ブレイス」、「柳月」、「杉山フルーツ」
の5社になります。
またこのほかに、コラムとして9社ほど紹介されていますので、
もしかしたら、ご存知ある会社もあるかもしれませんね。
ちなみに「杉山フルーツ」さんは、
当ブログの編集長yamagさんの会社のご近所だそうです。
さて、本書の最大の特色は
好業績を維持している実在する会社について書かれていること。
実在している会社ですから、その内容も非常に具体的で、
経営という部分で大いに参考になるのではないかと思います。
例えば、
● 業績や成長は継続するための手段にすぎない。
もちろん、業績は業績で大切です。
しかし、本当に大切なのは会社を存続させること。
業績ばかりを重視して従業員に負荷がかかりすぎて、
それについていけない社員はいっせいに辞職。
結果的に倒産に追い込まれるような会社もなかにはあります。
● 「伝統産業は時代が変わってしまったらダメだ」というのではなく、
それを守りながら、さらに新しい価値をつけて商品価値を高めていく
ということを行っているのが伊那食品工業です。
どの会社にも得意な技術や売りとなる商品があるかと思います。
それらに新たな付加価値を付け、新たな顧客を開拓すること。
これはどんな企業でも意識すべきことではないでしょうか。
● 「物づくり日本を復活させよう」などという運動が一時盛り上がりました。
しかし本当に大切なことは、弱者にやさしい、人間の尊厳を高めるような物づくりで
世界的なメッカになることだと思うのです。
これからの日本の製造業が生き抜くためにはどうすればいいか?
我々、中小企業の製造業者は自動車産業への依存度が高いです。
そのため、自動車関連がさえないと業界全体に停滞感が漂います。
それを将来、どのように打破していくか、
そのあたりに日本の物づくりの生き残る道があるように感じます。
いかがでしょう?
企業の経営という視点で非常に参考になるのではないでしょうか
また、経営者でない方が読んでも、
これらの会社の取り組み、考え方は非常にすばらしく。
読んでおいて損はないと断言できます。
最後に今回紹介されている企業に共通する点がありました。
それは、責任を外のせいにしないこと。
景気が悪い、業種が悪い、大企業が悪い。。。
のような外部要因のせいにすることを
本書で紹介されている5社はしません。
実際、外部要因のせいにしたところで、
自社の業績が回復するわけではありません。
確かに、そんな暇があるのなら、
社内に目をむけ、自社製品に付加価値をつける検討をした方が
はるかに有効であることは間違いないでしょう。
(と、いいつつもついつい愚痴を言ってしまいがちですが。。。)
景気に関係なく好業績を維持している企業の話が
具体的に書かれている
ちょっとした感動すら覚える良書です。
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